2009年02月28日

夢路キリコ『シュヴァリエ(8)』

〈2009年感想 9冊目〉
シュヴァリエ 8 (8) (マガジンZコミックス)
シュヴァリエ(8)
  • 発売元: 講談社
  • 価格: ¥ 560
  • 発売日: 2009/02/23

 連載されていたマガジンZ誌の休刊とともに巴里編が終了。割合綺麗な終わり方だったけれども,これは予定されていたものなのかしら。プロイセン編が予告されていますが,早期の再開を期待したいものです。
 表紙はリア。相変わらず買いづらいです。

 ノートルダム大聖堂での死闘から,デオンが竜騎兵に任ぜられプロイセンへ旅立つまでが描かれる巴里編の最終巻となっています。前巻から引き続く罪を持たない詩人との戦いは二転三転する展開が楽しい。ただ,ありがちと言えばありがちで容易に想像がついたのは残念なところ。そして,ソフィアの詩と魂がエマによって奪われ,プロイセン軍に詩人が加担するなど情勢は急変しました。今後の外連味に溢れた展開が非常に期待出来るだけに連載誌の休刊による中断を恨めしく思います。如何なる形でも構わないので早期の再開を心から祈っています。
 今巻での一番の読みどころは何といってもソフィアへの母ポンパドール夫人の想いでしょう。祖国フランスを救うために娘の死さえも厭わない彼女の悲痛な言葉の影に隠された真の想いはサン・ジェルマン伯爵ならずとも情にほだされるというもの。「ソフィア−どうか,わたくしを許さないで」という彼女の台詞には瞳が潤むものを感じます。私人としてよりも国益を優先させる彼女はフランスを導く政治指導者として正しいのかもしれませんが個人的には哀しい存在にも思えます。だからこそ,ソフィアから詩情のみを消し去りただの人にするというサン・ジェルマン伯爵の決意に期待をしたいのです。そして,そのソフィアの詩と魂を奪い去ったエマが素敵。彼女を急成長させ,双子のアンジェを導きの獣バルタザールにしたのはサン・ジェルマン伯爵だったのだけど,彼の真意は未だに見えず。ダグラス・マッケンジーではありませんが,作中でもっとも信用のできない人物であることに間違いありません。それでも,彼の飄々とした言動は憎めないのですよね。デオンやダグラス,ロビンとともに旅立ったプロイセンでの活躍が楽しみです。ただ,彼らにダランベールが加わらなかったことには大いに不満があります。使い道は幾らでもある人物だけに再度の登場を願っています。それにしても相変わらずフランス語とラテン語を駆使した山のような言葉遊びの数々には脱帽するばかり。当該言語の知識があれば,より楽しめるのでしょうね。ちょっと勉強したくなってきます。
 衒学的な諧謔精神に溢れた外連味のある冒険活劇として非常に好みの作品です。この8巻に及ぶ巴里編において,解かれなかった幾つもの謎は今後明かされうるのでしょうか。そして,リアの死に隠された真実をデオンは知る日が来るのか。来るべきプロイセン編の開幕を心待ちにしたいと思います。
posted by 森山 樹 at 22:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 感想
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