2009年04月15日

都戸利津『環状白馬線 車掌の英さん』

〈2009年感想16冊目〉
環状白馬線 車掌の英さん
  • 発売元: 白泉社
  • 価格: ¥ 550
  • 発売日: 2009/01/19

 架空の町の架空の電車の車掌の英さんを主人公とした連作漫画。巻数表示がないので,この一冊をもって完結しているという認識でいいのかしら。巻末に描き下ろしの「環状白馬線 特別運行」が収録されていますが,この類の掌編は大好き。端正な絵柄も好みなので,今後とも追いかけて行きたい作家となりそうです。

 環状白馬線を舞台に乗客と車掌の英さんとの触れ合いを描いた連作集。三篇が収録されていますが,どれも素敵な雰囲気に満ちた物語ばかり。安易な言葉ではありますが,“珠玉の”という表現が最も似つかわしく思います。「英さんの電車に乗った人は幸せになれる」という噂も宜なるかな。読んでいるだけでも心が柔らかく温かくなります。繰り返される平凡な日常に楽しみと変化を感じたくなる物語です。こんな素敵な車掌さんのいる電車には毎日でも乗りたいですね。ちなみに三篇の中で一番のお気に入りは第一話。英さんの電車に乗った三人の乗客の物語です。別々の三人が織りなす物語が有機的に絡み合っている構成も素敵。過去と現在が交錯する第二話もいいですね。小さい頃の英さんが可愛い第三話も当然のこと。詰まる所,全ての作品が大好きで仕方ありません。
 職務に忠実でぶっきら棒だけど優しい英さんの造形が最高。子供の頃に電車の中に置き去られた英さんですが,車掌だった養父の影響で真っ直ぐな青年となっています。何よりも車掌という仕事を大切にしているのは,環状白馬線こそが自分の居場所であり,自分の世界であると考えているからなのでしょう。英さんの回想や他の逸話から漏れてくる養父の英さんも素敵です。また,英さん以外の車掌さんや乗客たちもそれぞれに個性的で魅力に溢れています。個人的に好みなのは英さんと仲がいい髪を後ろで束ねた車掌さん。どこか斜に構えてはいますが,英さんの本質を一番理解しているように思います。ちなみに彼は第三話で英さんの悪口を言っていた子供なのかな。何となく似ているのだけれど。それから,第二話で登場した女性の車掌さんが本当に可愛らしくて大好き。出番が少ないのが残念です。乗客では第一話で登場の英さんに淡い想いを寄せていたお姉さんが好き。英さんの「お客さんはみんなただのお客さん。初めてでも毎日でも同じお客さんだ」という言葉が身に沁みます。第三話で旅をしていた少年も好きだなあ。英さんと再会した場面が見たかった。第二話の褐色肌の眼鏡少女も可愛くて良し。車掌さんも乗客さんもみんな素敵でたまりません。
 大絶賛の一冊でした。出逢えたことを天に感謝したくなる作品ですね。どこまでも優しい雰囲気が非常に好み。大切な誰かにお薦めしたくなる物語です。この一冊で終わってしまうのがあまりにも惜しく思えてなりません。願わくば,英さんと,そして環状白馬線を巡る人々と再会したいものです。
posted by 森山 樹 at 15:14| Comment(2) | TrackBack(1) | 感想
この記事へのコメント
こんばんは。 いつも楽しく読ませて頂いてますw
私もこの作品、大好きです。 構成的な素晴らしさの中にも、きちんと感情的な優しさもあって。

>第二話で登場した女性の車掌さんが本当に可愛らしくて大好き。

私もめちゃめちゃお気に入りでした(笑)。 可愛いったらないですよねw 

>出逢えたことを天に感謝したくなる作品ですね

仰るとおりだと思います。 どんどん読まれていって欲しい、そんな作品でした。 
Posted by りる at 2009年04月17日 01:03
>りるさん
こんにちは。
書き込みありがとうございます☆

素敵な作品ですよね。
派手さはないけれど色彩豊かな感じがします。
そしてあの女性車掌さんの可愛らしさは最高です。
もっと出番が欲しかったな。
Posted by 森山 at 2009年04月19日 06:42
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