2013年11月15日

都戸利津『嘘解きレトリック(1)』

〈2013年漫画感想21冊目〉
都戸利津『嘘解きレトリック(1)』


 昭和初期を舞台とした都戸利津の新作漫画。嘘を聴き分ける超能力を持った少女・鹿乃子と推理力に優れた探偵・祝左右馬の活躍が描かれる探偵活劇となっております。昭和初期を舞台にした探偵活劇というだけで素直に好み。都戸利津らしく登場人物が何処か惚けた味わいがあるのがたまりません。嘘と真実が交錯する難事件をそれぞれの特性を活かして解決するふたりの姿が印象的。特にその能力故に疎まれ,故郷を棄てる羽目になった鹿乃子を受け止める左右馬が素敵に格好いい。明敏な推理力以外は完全なダメ人間でありますが,その推理力よりも随所に見せる優しさこそが左右馬の本当の魅力というべきなのでありましょう。学生時代からの親友である刑事の端崎さんとのやり取りも微笑ましいものがあります。登場人物の誰もが魅力を発しているというのが嬉しいです。このあたりは流石に都戸利津といったところ。今巻には4篇が収録されていますが,どれも所謂〈日常の謎〉から犯罪に繋がっていくというのが面白い。他愛なさも感じますが,作風を考えれば,これくらいがちょうどいいのでありましょう。昭和初期という時代から想起される猟奇性は今作には不要と思われます。本来ならば暗い世相となるべき時代ではありますが,少なくとも今作の中だけでも明るくのんびりした理想の昭和初期を描いて欲しいものであります。そして,疎まれ続ける中でも真っ直ぐな性格を失わなかった鹿乃子が見つけた自分の居場所が保たれることを祈りたいと思います。続巻の展開が実に楽しみであります。
タグ:都戸利津
posted by 森山 樹 at 22:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 感想
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