2014年05月10日

川下寛次『当て屋の椿(9)』

〈2014年漫画感想10冊目〉
川下寛次『当て屋の椿(9)』


 江戸時代を舞台とした怪奇ミステリィの第9巻。前巻から続く〈あがほとけ〉篇の後半部分と新章〈天網〉篇の序盤が収録されています。予言者として君臨する鈴懸の真相は割合に予想できたものでありましたが,まさに悪夢としか言いようがない〈天網〉の展開はかなり衝撃的。鈴懸の側に控えていた少女・孔雀が此処まで重要な意味合いを持つとは思いもよりませんでした。そして,これまでの事件の影で蠢動を続けてきた隻眼の男・シュロがやはり今回も暗躍している模様。彼の目的は未だに見えず。但し,これまでの描写から椿とは何らかの因縁を持つ人物であることは確実かと思われます。個人的には鈴懸の信徒を翻弄する鳳仙の一見卑屈な言動が大変に好み。幸せだけではなく,不幸をも共有しようとする,鳳仙や椿,侘助らの確かな絆を感じます。そこに新たに加わったイノが如何なる働きをするのかが楽しみ。鳳仙への懸想の帰結も気になるところであります。椿の鳳仙への想いも読めないところがありますからね。此処に来て意外に活躍を見せる侘助の存在も楽しい。鈴懸の言葉が侘助を苦しめるという椿の予言めいた言葉はちょっと気がかりですけれども。救いのない事件が続きますが,遂に吉原の巫女・篝が物語から退場してしまいました。その死を受けての椿の姿が非常に印象的。冷静さの中に見せる犯人への強い怒りが怖さをも感じます。物語は終幕に近づきつつあるのかな。今後は恐らく椿自身の物語に焦点が当てられることになるのでしょう。急展開を迎えた物語が如何なる方向へと進んでいくのか,全く予想が出来ません。最終的には幸福な結末に至って欲しいものでありますが,篝が彼岸の彼方に去った今,それも望むことは厳しいことのように思います。
タグ:川下寛次
posted by 森山 樹 at 22:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 感想
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