2014年09月15日

桑原太矩『とっかぶ(3)』

〈2014年漫画感想21冊目〉
桑原太矩『とっかぶ(3)』


 間倶楽高校特別課外活動部,通称とっかぶの活躍を描く学園青春漫画の第3巻。日常を非日常に変える,賑やかで楽しい学園生活は素直に羨ましい。特に生徒会との絡みが増えてから面白さが加速してきた印象があります。単純に副会長の丘町さんが好みというだけではあるのですけれども。今巻に収録されているのは全部で6話。とは言っても,前半の3話は前巻から引き続く通り魔ハンプティダンプティに絡む一連のお話となっています。ハンプティダンプティの正体である美輪園花子と沢のヒーロー対決が面白かった。花子はなかなか素敵な個性の持ち主なので再登場を期待したいものです。残る3篇では生徒会とのバーベキューの話が一番好き。沢の失敗を機転で成功に変えるくらげのお手並みが見事。丘町さんの出番が多いのが嬉しい回でもあります。当初は微妙に敵対していた生徒会ですが,すっかり仲良しになった感がありますね。とは言え,生徒会長の胡乱さは健在なので,時に対立することは避けられないのでしょうけれども。篠田先生の出番が多い「空中レジスター」もお気に入り。丘町さんや篠田先生だけではなく,千歳や沢たち女性陣が実に魅力的なのが嬉しい。変に暗くならずに明るく楽しい学園生活をこのまま続けて欲しいものであります。今後も大いに期待します。

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2014年09月14日

森薫『シャーリー(2)』

〈2014年漫画感想20冊目〉
森薫『シャーリー(2)』


 約10年ぶりに刊行された英国エドワード朝メイド漫画の第2巻です。相変わらずのベネットさんとシャーリーの楽しそうな毎日が嬉しい。大きな起伏のある物語ではなく,日常を描いたお話を此処まで魅力的に提示するのは素晴らしいです。今回は全8篇が収録されていますが,特にお気に入りは「届け物」と「ハイヒール」かなあ。「届け物」はベネットさんの仕事場にシャーリーが財布を届けるお話。普段はずぼらでだらしないベネットさんの手際のいい仕事ぶりがたまらなく素敵です。シャーリーならずとも見惚れてしまうというもの。ベネットさん手作りのサンドウィッチとパイの魅力も格別なものがあります。「ハイヒール」は年頃の女の子らしく背伸びしたお洒落に憧れるシャーリーが実に可愛い。また,「お願い」では最終コマのシャーリーの夢の中で踊るふたりの姿がたまらなく微笑ましいものがありました。全般的に作者の趣味全開という感じではありますが,それがまた楽しいのが素敵です。描きたいことを描きたいように描いているのだなあということがよくわかります。それでいて,普遍的な面白さを有しているというのは稀有なことなのではないでしょうか。このふたりの優しくて穏やかな日々が続くことを祈らずにはいられません。今後もライフ・ワークとして不定期に少しずつ書いていくとのこと。続巻が刊行されるまでに幾らかかるか分かりませんが,気長に楽しみに待ちたいと思います。或いは時代が重なっている『エマ』との共演も見てみたいものであります。

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2014年08月11日

こざき亜衣『あさひなぐ(12)』

〈2014年漫画感想19冊目〉
こざき亜衣『あさひなぐ(12)』


 女子高生薙刀部漫画の第12巻。和歌山での合宿篇の最後までとさくらの退部騒動の途中までが描かれます。合宿を経て,二ツ坂高校の面々が明らかに上達しているのが嬉しい。そんな中でひとり取り残されているさくらの疎外感は辛いものがあります。とは言え,彼女の場合は本人に起因する部分も多いのであまり同情の余地はないのですけれど。一度は薙刀部を辞めることを宣言したさくらが如何に戻ってくるのかに注目したいもの。それにしても,やす子監督の中では完全にさくらではなく旭を戦力として見ているというのが面白い。一年生三人組の中で一番期待されていなかった旭の躍進が楽しいです。真春がかつて語った,旭にしかない特別な力,というものはまだよく分かりませんけれども。或いはそれは今巻で夏之がさくらに語った「それでも前に進める能力」を意味しているのかもしれません。その意味では真春と夏之の姉弟こそが旭の一番の理解者と言えるのでありましょう。また,個人的には合宿を経て本気で二ツ坂高校薙刀部を指導する気になったやす子監督の格好良さが素敵な巻でもありました。寿慶さんとの電話での会話からの独白の流れが美しいです。他にも國陵高校の寒河江さんの問題など読みどころは十分。寒河江さんは結構好きな人物なので何とか早く復活して欲しいものであります。旭と夏之の関係も一歩前進したと言えるのかどうか。夏之に会う時に買った髪飾りをその日のうちに失くしてしまう場面は印象的でありました。物語は開始から一年を経て,もうすぐ二度目の春を迎えます。旭たちの進級や新入生の加入などの展開も期待できそう。大いに楽しみにしたいものであります。
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2014年08月02日

椎名高志『絶対可憐チルドレン(39)』

〈2014年漫画感想18冊目〉
椎名高志『絶対可憐チルドレン(39)』


 中学生篇の完結となる『絶対可憐チルドレン』の第38巻です。物語の開始時から予告されていた破滅の未来が白紙となったのは何よりも僥倖。但し,あくまでも白紙であるというのは重要なこと。すなわち,全ての不幸が回避されたことを意味するわけではありません。寧ろ,不穏な未来の到来を予感させる描写も垣間見えるのが気がかり。何よりも黒い幽霊の実質的な指導者であるギリアムは生き残ったわけで,新たな火種は残されたまま。間もなく開始されるであろう高校生篇においても厄介な存在として立ちはだかってくることは容易に予感出来ます。しかし,ギリアムからユーリが解放されたのは素直に喜ぶべきことでありましょう。暫くは薫たちとは離れることになりますが,いずれ高校生篇での再登場を期待したいと思います。そして,太平洋戦争時より兵部とともにあった伊-八号が遂に逝ってしまいました。兵部に見せた満面の笑顔が美しい。その兵部に未来を託した陸軍超能部隊の面々の幻影も切ないものがあります。とりあえず,中学生篇はユーリと兵部を軸に綺麗にまとまったなあという印象があります。過去を払拭したふたりが未来に何を見出すのかを楽しみにしたいもの。全ての物語の終着点となる高校生篇の開幕を心待ちにしたいと思います。中学生篇では出番の少なかった人物の再登場も楽しみにしています。勿論,新たな人物の登場もあり得るのでしょう。希望の未来を見せて欲しいものであります。
タグ:椎名高志
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2014年07月27日

久織ちまき『聖闘士星矢セインティア翔(2)』

〈2014年漫画感想17冊目〉
久織ちまき『聖闘士星矢セインティア翔(2)』


 聖闘少女の戦いを描く〈聖闘士星矢〉の番外篇作品の第2巻です。銀河戦争開幕前夜という舞台背景もあって,一角獣座の邪武が客演しているのが嬉しい。尤も,扱いはあまりいいとは言えませんけれども。また,端役ではありますが,獅子座アイオリアと蠍座ミロのふたりの黄金聖闘士に教皇も姿を見せています。流石に教皇こと双子座のサガが物語に関わってくることはありえないでしょう。それでも本篇との関わりは今後も期待したいものであります。物語は邪神エリスの憑代として連れ去られた姉の響子を救うべく子馬座の聖闘士となることを志す翔子の奮闘が中心となります。彼女が修行する場所は戸隠連峰。孔雀を携えた謎の美女マユラが師となります。マユラの詳細は明らかにされていませんが,恐らくは孔雀座の聖闘士なのでありましょう。その必殺技の名前と特性を考えれば,乙女座のシャカに連なる人物とも想像できます。このあたりはTVシリーズとの関連性も窺えて楽しい。マユラの弟子であるミライとシナトは如何なる役目を担うのでしょうか。基本的には聖闘少女の物語ということで女性以外が翔子とともに闘うということは考えにくいのですが。一方でいるか座の美依は女神アテナこと城戸沙織を狙って襲撃してきた邪霊士エモニと対峙。その華やかな技を披露しています。そして,再び沙織の前に姿を見せた邪神エリス=響子の前に子馬座の聖衣を纏って翔子が立ちはだかるといったところで今巻は終了。次巻では姉妹の戦いということに相成るのでしょうか。基本的には〈聖闘士星矢〉に少女漫画的な趣味を付加した雰囲気がかなり好みです。本篇の細かい設定を窺わせるような描き方も楽しい。それ程長く続きそうな作品には思えませんが,完結まで楽しみに読みたいと思います。
タグ:久織ちまき
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2014年07月13日

手代木史織『聖闘士星矢THE LOST CANVAS冥王神話外伝(10)』

〈2014年漫画感想16冊目〉
手代木史織『聖闘士星矢THE LOST CANVAS冥王神話外伝(10)』


 射手座の黄金聖闘士シジフォスの物語が語られる『聖闘士星矢THE LOST CANVAS冥王神話外伝』の第10巻。本篇にも登場した闇に堕ちた冥闘士としてのシジフォスとの戦いが中心になります。若き日のハスガードやアスプロス,先代魚座の黄金聖闘士ルゴニスの客演も嬉しい。黄金聖闘士同士の関わりあいはあまり本篇では描かれることが多くなかったので,外伝の密やかな楽しみのひとつでもあります。また,シジフォスの実兄である獅子座の黄金聖闘士イリアスが壁となって立ちはだかるのも興味深い。結局のところ,シジフォスにとって戦うべき相手は己であり,その己を導く兄こそが乗り越えるべき相手であったということなのでしょう。この点において外敵と戦うことが中心であったこれまでの外伝とは一線を画す内容となっています。ギリシア神話好きとしてはデルフォイの巫女アルケスの登場も楽しかった。シジフォスが己の進む道を発見する物語であると同時に獅子座の黄金聖闘士レグルスの誕生秘話としての読み方も出来る物語であります。しかし,イリアスの圧倒的な強さは凄まじい。此処までの強さを発揮した聖闘士というのは様々な媒体でも初めてなのではないでしょうか。彼がいれば,聖戦の行方も大きく変わったことでありましょう。本篇でも強烈な印象を残したイリアスの物語が描かれたことに感謝します。残すは双子座と牡羊座の2篇ということになるのかな。個人的にはパンドラやラダマンティス,アイアコスら冥王側を主人公とした外伝も読みたいところです。特にアイアコスの真の名が水鏡という,本篇では遂に語られなかった伏線が明らかにされることを願ってやみません。
タグ:手代木史織
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2014年07月06日

車田正美『聖闘士星矢NEXT DIMENSION冥王神話(9)』

〈2014年漫画感想15冊目〉
車田正美『聖闘士星矢NEXT DIMENSION冥王神話(9)』


 鳳凰座の一輝が表紙の『聖闘士星矢NEXT DIMENSION冥王神話』の第9巻。いつの間にか,10巻を目前としているのに物語が全く進んでいるように思えないのは何故でしょうか。特にここ数巻の停滞感は異常。短期集中連載の体裁を取っているので尚更そう感じるのかもしれませんが,もう少し展開を早めて欲しいものであります。天闘士の斗馬が果たす役割も未だに謎のままだし,何よりも本来の主役で或る筈の星矢が本篇ではまるで活躍していないというのも斬新過ぎます。蛇遣い座の黄金聖闘士も早く姿を見せて欲しいもの。今巻は蟹座の黄金聖闘士デストールと冥王軍三巨頭のひとり天貴星グリフォンのフェルメールの戦いが中心となります。そこに鳳凰座の一輝が絡んでいくという図式。相変わらず,鳳凰幻魔拳の圧倒的な威力は健在。フェルメールの必殺技コズミック・マリオネーションを現代における戦いで既に目の当たりにしていたというのも一輝の優勢に繋がりました。一方のデストールは完全に喜劇役となってしまっているのが辛い。個人的には此処までネタ的な造形は必要なかったのではないかと思います。女性口調だけど男気のある黄金聖闘士というだけで個性は十分に立っていたのですけれどね。このあたりの過剰な演出は好むところではありません。醒めてしまうのですよね。〈聖闘士星矢〉は熱い展開だけで十分なのであります。今後は獅子座の黄金聖闘士カイザーと一輝の対峙ということになるのかな。女神アテナに対して反旗を翻すことを宣言した天秤座の黄金聖闘士童虎の動向も気になります。問題は次の掲載がいつになるかですね。なるべく早期の連載再開を願っています。
タグ:車田正美
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2014年06月29日

大久保圭『アルテ(1)』

〈2014年漫画感想14冊目〉
大久保圭『アルテ(1)』


 16世紀フィレンツェを舞台とした作品です。主人公は貴族の娘ながら,画家工房への弟子入りを志す15歳の少女アルテ。女性の地位が高くなかった時代に,自分の夢の為にあえて困難な道を行くことを選んだ少女の姿が描かれます。意外に芯の強さを見せるアルテの姿が魅力的。世間知らずな部分は少なからずありますが,それでもなお自分の信じる道を行こうとする強さが素敵です。そのアルテを弟子として迎え入れた工房の主レオも非常に心惹かれる人物。そのレオの顧客である高級娼婦のヴェロニカを含めて,アルテを囲む人物が印象的であります。アルテと対立し,結果的にはほぼ絶縁状態となってしまったアルテの母の想いも痛いほど分かるのですよね。いつか,ふたりが和解することを望んでやみません。物語はアルテの画家修業が中心となりますが,後半からはレオへの淡い恋が主題となりつつあるのがちょっと気がかり。物語の展開も早いので,やや拙速さを感じてしまいます。個人的にはレオへの恋を意識するのはもうちょっと後でも良かったのではないかなあという印象。それよりも16世紀の画家見習いの生活を描いて欲しいものであります。今巻の末にヴェロニカに連れられたアルテは華やかなフィレンツェの暗部に直面することになります。この経験が如何に彼女に影響を及ぼすのが気になるところ。人生の先輩としてアルテを導くことになるのであろうヴェロニカの真意も楽しみ。今後,如何なる運命がアルテの先に待ち構えているのか期待したいと思います。世界史趣味者としては歴史上の人物や出来事も物語に絡めて欲しいものでありますね。
タグ:大久保圭
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2014年05月27日

桑原太矩『とっかぶ(2)』

〈2014年漫画感想13冊目〉
桑原太矩『とっかぶ(2)』


 小さな日常を事件に変える特別課外活動部,通称とっかぶの活躍を描く学園青春物語です。現段階では2巻までが刊行。曲者揃いのとっかぶの面々が実に楽しい。2巻からはとっかぶと時に対立し,時に協力し合う,生徒会も物語に参戦し賑やかになっています。現在のところ,とっかぶはアマチュア・スパイのくらげ,ヒーロー志願の熱血少女・沢,一見不良に見えるけれど人情家で常識人の千歳の3人で構成されています。個人的には千歳が抜群に好み。2巻での教育委員会との接待野球で見せた活躍が印象的であります。冷めているように見えるけれど,性根は熱いんだよね。幼馴染に寄せた想いも切なくて可愛い。その千歳に匹敵するくらいに好みなのが。2巻から登場の生徒会副会長の丘町さん。その美貌と怒りっぽい性格が素敵です。頭はいいのだろうけれど,性格的に不器用なんだよね。その真っ直ぐな感情はとっかぶとは微妙に相容れない部分もあるけれど,結果的には良い組み合わせに思えます。このままの立ち位置を維持して欲しいもの。とっかぶ顧問の水卜先生の掴みどころのなさも面白い。此処までで一番好きなのは前述の接待野球と1巻で描かれた食い逃げ常習犯との勝負かなあ。どのお話も結果的には後味がいいものになっているのが嬉しいです。学生生活を楽しく送るとっかぶ達が羨ましくなる作品であります。今後も是非この路線で楽しませて欲しいなあ。大いに期待したいものであります。
タグ:桑原太矩
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2014年05月25日

冬目景『イエスタディをうたって(10)』

〈2014年漫画感想12冊目〉
冬目景『イエスタディをうたって(10)』


 交錯する想いがもどかしくて切ない『イエスタディをうたって』の記念すべき第10巻です。連載開始から15年が経過して,漸く終わりが見えてきたかなあという印象。とは言え,人間関係の混迷に対する打開の糸口を見出すことがまだ出来かねているのですけれど。何とかそれなりに幸せな結末に帰結して欲しいものです。陸生と榀子の関係がその鍵を握っているのでしょうけれども。個人的には晴を応援しているので陸生に想いが届いて欲しいと願います。雨宮も悪い人間じゃないんだけど,その観点からお邪魔虫に見えてしまうのですよね。みもりと結ばれれば,此方は此方で丸く収まるのだけどなあ。杏子さんや楼子,莉緒さんといった脇を固める人物は相変わらず魅力的。特に楼子や莉緒といったさばけた女性に惹かれるものを感じます。浪と莉緒の同棲を陸生が知ったことが今後の物語を如何なる方向へ進ませるのかは興味があります。また,陸生への想いと雨宮からの想いの狭間で困惑して,ふたりの前から姿を消した晴がいつ戻って来るのかも重要な出来事となりそう。今巻最後での浪と榀子,陸生と榀子の会話に決別の香りを感じるのは気のせいかなあ。互いを思い遣るが上での優柔不断が誰も幸せにしない現状を招いているように感じます。恋愛には或る種の利己主義は必要なのでありましょう。陸生と雨宮から一旦離れることで気持ちに整理をつけようとする晴の結論が物語を帰結に至らしめることになりそうです。誰もが幸せになれる結末を望んでやみません。なお,巻末で10巻到達を記念して踊る晴が素敵に可愛かったです。この笑顔を再び本篇で取り戻して欲しいなあ。
タグ:冬目景
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2014年05月11日

高尾じんぐ『くーねるまるた(4)』

〈2014年漫画感想11冊目〉
高尾じんぐ『くーねるまるた(4)』


 ポルトガルからの留学生マルタの素敵な日常を描いた作品の第4巻。今巻も相変わらずマルタの美味しそうな食生活が中心となっています。お金はなくても丁寧に料理をするマルタの姿が実に愛おしい。日本人以上に季節感を大切にした彼女の生活は思わず見習いたくなってしまいます。提示される料理がどれもそれ程難しくなさそうなのも嬉しい。気軽に生活の中で試すことが出来そうです。中でも今巻で印象的だったのはナナクサ丼と巣ごもりポテト,するめラーメンあたり。特にナナクサ丼は薬味好きのシラス好きにはたまりません。七種類の薬味を用意するのは大変なので,数種類だけでも美味しく頂けそうです。巣こもりポテトはペルー料理で似たようなのを見かけたことがあります。単純だけど,それ故に美味しさは間違いないでしょう。するめラーメンはひと手間かけたインスタントラーメン。するめの出汁は確かに味噌ラーメンに合いそうです。どれも簡単なのでいずれ試してみたいと思います。マルタを取り巻く神永さんや美緒子さん,由利絵さんとの生活も実に楽しそう。特にお酒好きの神永さんはやはり大のお気に入りですね。初登場の文里さんも素敵な眼鏡女性なので今後の再登場にも期待をしたいもの。そして何よりもマルタのお姉さんの登場が楽しい。今巻は半端なところで終わっているので実際にマルタとの交流が描かれるのは次巻ということになりますけれども。表情豊かなマルタを見ているだけで楽しい作品です。美味しいものを食べた時の満面の笑顔が眩しい。いつまでもこの雰囲気を保って欲しいものであります。こんな生活が理想に思えてなりません。羨ましい。
タグ:高尾じんぐ
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2014年05月10日

川下寛次『当て屋の椿(9)』

〈2014年漫画感想10冊目〉
川下寛次『当て屋の椿(9)』


 江戸時代を舞台とした怪奇ミステリィの第9巻。前巻から続く〈あがほとけ〉篇の後半部分と新章〈天網〉篇の序盤が収録されています。予言者として君臨する鈴懸の真相は割合に予想できたものでありましたが,まさに悪夢としか言いようがない〈天網〉の展開はかなり衝撃的。鈴懸の側に控えていた少女・孔雀が此処まで重要な意味合いを持つとは思いもよりませんでした。そして,これまでの事件の影で蠢動を続けてきた隻眼の男・シュロがやはり今回も暗躍している模様。彼の目的は未だに見えず。但し,これまでの描写から椿とは何らかの因縁を持つ人物であることは確実かと思われます。個人的には鈴懸の信徒を翻弄する鳳仙の一見卑屈な言動が大変に好み。幸せだけではなく,不幸をも共有しようとする,鳳仙や椿,侘助らの確かな絆を感じます。そこに新たに加わったイノが如何なる働きをするのかが楽しみ。鳳仙への懸想の帰結も気になるところであります。椿の鳳仙への想いも読めないところがありますからね。此処に来て意外に活躍を見せる侘助の存在も楽しい。鈴懸の言葉が侘助を苦しめるという椿の予言めいた言葉はちょっと気がかりですけれども。救いのない事件が続きますが,遂に吉原の巫女・篝が物語から退場してしまいました。その死を受けての椿の姿が非常に印象的。冷静さの中に見せる犯人への強い怒りが怖さをも感じます。物語は終幕に近づきつつあるのかな。今後は恐らく椿自身の物語に焦点が当てられることになるのでしょう。急展開を迎えた物語が如何なる方向へと進んでいくのか,全く予想が出来ません。最終的には幸福な結末に至って欲しいものでありますが,篝が彼岸の彼方に去った今,それも望むことは厳しいことのように思います。
タグ:川下寛次
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2014年05月08日

椎名高志『絶対可憐チルドレン(38)』

〈2014年漫画感想9冊目〉
椎名高志『絶対可憐チルドレン(38)』

 中学生篇が最終幕へと差し掛かった『絶対可憐チルドレン』の第38巻です。表紙は何故かマッスル大鎌。今巻でも出番は少ないながらも印象的な働きを見せています。風体や言動はともかくとして,数少なく精神的に大人の人物なのですよね。今後もP.A.N.D.R.A.の中核としての活躍を期待します。物語は虚数空間から復帰を果たした兵部京介が中心となる〈リターン・オブ・ファントム〉の続き。黒い幽霊のギリアムとの戦いが主に描かれます。皆本や賢木らと共闘する兵部の姿がやはり嬉しい。三幹部との再会も印象深いものがあります。全篇に渡って戦いが続く為,ギャグ分は少なめ。また,ギリアムやユーリの過去に焦点が当てられているのも興味深い。特にギリアムが虚無的な思考に至った理由は結構辛いものがあります。黒い幽霊側の事情がまともに描かれるのはこれまで殆どなかったですからね。ギリアムの境遇には思わず同情してしまいますが,彼の所業そのものは決して許されるものではありません。一方でフェザーの物語も終焉が迫っています。未来から来た薫というその正体が遂に明かされ,来るべき未来を変化させる為に戦う彼女の姿が印象的。彼女を交えてのインフィニティ・ブーストは燃えますね。ユーリを取り戻すべく戦う未来の三人とともに現れたもうひとりの超能力者はやっぱり未来のユーリなのかな。そうすると物語の辻褄が微妙に合わないことになって来るのですけれど。このあたりは中学生篇の最終巻となるであろう次巻に期待したいと思います。連載は最終章である高校生篇の開始を夏に控えて現在は休止中。早期の連載再開を期待したいものです。今巻では全く出番がなかったカズラや澪,パティらの成長も楽しみにしています。
タグ:椎名高志
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2014年05月06日

和月伸宏『エンバーミング(8)』

〈2014年漫画感想8冊目〉
和月伸宏『エンバーミング(8)』

 1年以上の長期休載を経て久しぶりに刊行された『エンバーミング』の第8巻です。人造人間の聖地ポーラールートを舞台とした人造人間たちの戦いが描かれます。今巻の中心となるのはザ・ワンことジョン=ドゥとウンゲホイヤーとの究極の8体同士の激突。筋力機能特化型人造人間ウンゲホイヤーの圧倒的な膂力をも粉砕するジョン=ドゥの〈茨の十字〉の破壊力が素晴らしい。この戦いで人間としての意地を見せたワーグナーの存在感が光りました。彼の死があってこそ,瞬間的にザ・ワンの自我の発動となったのでありましょう。思えば,ザ・ワンの過去は未だに不明のまま。このあたりも今後の大きな焦点になってきそうであります。後半では愈々アシュヒトの父であるDr.リヒターが登場。また,死体卿が第8の究極の8体であることが明かされました。その本名はトート=シャッテン。如何なる機能が特化されているのかはまだ不明ですが,恐らくはDr.リヒター及びグロース・フランケンシュタインともども厄介な難敵となることは間違いありません。その死体卿を盲信するタイガーリリィ・コフィンは〈光速視線〉をもってジョン=ドゥと対峙。心酔する死体卿の為に立ちはだかる可憐な容姿がたまらなく好み。彼女の帰結は不幸なものであることを予感せざるを得ませんが,最後まで見届けたいものであります。そして,ジョン=ドゥさえも翻弄する彼女の〈光速視線〉を破ったアバーラインの奇策が楽しい。タイガーリリィとアバーラインの相性の悪さが微笑ましいです。物語は愈々最終幕へと近付いています。ポーラールートでの戦いが如何なる終焉を迎えるのか楽しみにしています。今巻では全く出番がなかったヒューリーとピーベリーの再登場にも大いに期待をしたいもの。アシュヒトとエルムの決着もまだついていません。次巻はもう少し間を置かずに刊行されることを願っています。
タグ:和月伸宏
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2014年04月14日

春河35『文豪ストレイドッグス(4)』

〈2014年漫画感想7冊目〉
春河35『文豪ストレイドッグス(4)』


 文豪異能力戦闘漫画の第4巻。ポートマフィアの首魁として森鴎外が登場したり,北米の異能力者集団『組合』を統べるフィッツジェラルドが登場したりとなかなかに激動の巻となっております。また,内務省異能特務課なる組織の存在も明らかになりました。武装探偵社に許可を与える為に尽力した人物として夏目漱石の名前が挙がっているのも興味深いところです。相変わらず,外連味に溢れた頓痴気な設定が楽しい。前巻末から日本のみならず世界の文豪が登場を始めていますが,今巻でも新たに『組合』の異能者としてルーシー・モード・モンゴメリが新たに姿を見せました。彼女の異能は「深淵の赤毛のアン」。異空間に対象を引きずりこむという能力となります。モンゴメリに対峙するのは中島敦と谷崎潤一郎,そしてこの段階ではまだ正体が明らかにされていなかったけれど森鴎外の三人。特に谷崎潤一郎の「細雪」の意外な使い勝手の良さが目立ちました。なお,森鴎外の異能は「ヰタ・セクスアリス」。その詳細は明らかになっていません。彼に付き従い,彼を翻弄する少女エリスが鍵を握っているのかな。名前からして『舞姫』からの引用であり,重要な立ち位置にあると推測されます。また,ポートマフィア側では傷ついた芥川龍之介を一途に想う樋口一葉の姿が印象的でありました。彼女を支援する『黒蜥蜴』の三人も格好いいね。全般的に相変わらず面白いのですが,与謝野晶子の出番がなかったことには不満。アガサ・クリスティも早く本篇に絡んできて欲しいです。武装探偵社にポートマフィア,『組合』を交えての戦いが如何なる展開を迎えるのか楽しみであります。
タグ:春河35
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2014年03月30日

アキリ『ストレッチ(1)』

〈2014年漫画感想6冊目〉
アキリ『ストレッチ(1)』


 ストレッチを媒介としたふたりの女性の共同生活を描いた作品です。題名にストレッチと付いている通りに,ストレッチは絵入りで解説がなされる重要な要素ではありますが,場合によってはストレッチが全くない回があるのが面白い。あくまでも主題は元不良で強気なOLの慧子とその後輩で天然な大学生の蘭の共同生活となっています。基本的には微妙に百合めいたふたりの関係が緩く明るく描かれるのですが,ふたりがそれぞれに背負う暗さや辛さが折々で触れられるのがやや気がかり。あまり鬱な展開は好むところではありません。出来うるならば,緩さや明るさを主軸にふたりの生活を描いて欲しいものであります。慧子と蘭はそれぞれに魅力的。後輩である蘭のほうがややともすれば,微妙に主導権を握っているように見えるのが楽しい。高校時代のふたりの姿も可愛いね。一番好みなのはふたりの距離感かなあ。適度な距離感を保っているので,無駄に依存しているように思えないのですよね。仕事は出来るのだろうけれど随所にダメな感じの見受けられる慧子と天然気味なくせに辛辣な毒舌も吐く蘭のふたりの今後が如何に描かれるのか楽しみです。あまり暗く重たい展開になれなければいいのですけれどね。ストレッチの解説そのものも結構分かりやすいので気が向いたときに試してみるのも悪くなさそうです。
タグ:アキリ
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2014年03月29日

こざき亜衣『あさひなぐ(11)』

〈2014年漫画感想5冊目〉
こざき亜衣『あさひなぐ(11)』


 薙刀を題材とした青春武道漫画の第11巻です。前巻に引き続き和歌山合宿篇での交流戦が中心に描かれます。何よりも,此処まで殆どいいところのなかった旭が初勝利を収める戦いが非常に熱い。愛山高校の久保さんという難敵から見事に奪った勝利は今後の大きな飛躍の契機となって欲しいもの。そして,その旭の勝利を才能ではなく稽古の成果と評する将子の言が嬉しい。旭の基本を綺麗だと述べる真春の言葉と合わせて,見ている人はきちんと見ているのだということを思わせます。勿論,能力に劣る自分を冷静に見つめた上で打開策を考えだした旭が一番素晴らしいのですけれども。適当でいい加減に見えますが,きちんと指導者としての役割を果たすやす子も個人的にはかなり好みですね。いずれにせよ,旭によってもたらされた愛山高校戦の勝利は大きな転機となりそうな予感があります。一方で國陵高校は戸井田奈歩率いる熊本東高校を後一歩まで追いつめながら惜しくも勝利を逃しました。とは言え,一堂寧々に続いて勝利を収めた的林つぐみの成長はかなり大きい。しかし,惨敗を喫した寒河江先輩の存在が内紛の原因となってしまった感があります。このあたりがちょっと気がかりです。次巻ではいよいよ熊本東高校との戦いになりますが,真春以外は太刀打ち出来ないことでありましょう。寧ろ,この合宿を通じて出逢った愛山高校や熊本東高校との再戦が如何なるものになるかが楽しみです。國陵高校とは同じ地区ですから何度も戦うことになるでしょうしね。
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2014年02月23日

浅田京麻『文明開化とアンティーク(1)』

〈2014年漫画感想4冊目〉
浅田京麻『文明開化とアンティーク(1)』

 明治時代を舞台とした美術ミステリィ。どちらかというと人情ものの色合いが濃いような気もしますが,何はともあれ一話完結型の物語が綴られます。設定自体が既に好みということもあって,基本的には好感触。登場する男性陣が有能かつ性格も良く,美男子揃いというのはやや苦笑せざるを得ませんが,然程に目くじらを立てることもありますまい。貧乏士族の娘の結子と古美術店霧島堂の鑑定士ミハルが主人公となります。今巻には4話が収録。雪舟の掛け軸や酒井抱一の画,或いは仏像や根付といった美術品が物語の中心に位置するのが楽しいです。また,時代背景をきちんと織り込んでいるのも好印象。自分の借金を立て替えてくれた恩人でありながら,その性格ゆえにミハルに隔意を置いていた結子が徐々に彼に惹かれていくには王道と言えば王道かな。如何にも少女漫画の文法に則っているという感触はあります。ミハルの友人の蜜吾や馨らも定型ながら脇を固める存在としては悪くありません。とりあえず,この種の作品が好みであれば問題なく楽しめることかと思います。もう少し,独自性が欲しいところではありますけれども。ミハルの持つ思念を読み取る力を上手く使って欲しいもの。便利すぎるだけに多用して陳腐化することを危惧してしまいます。作者は学生時代に美術関係を学んでいたとのことで,そのあたりの細かい知識が反映されることに期待。尤も,自分が日本美術にそれ程明るくないのが難点ではあります。何はともあれ,今後の展開が大いに楽しみであります。割と強気な結子が結構好みなのは嬉しいですね。
タグ:浅田京麻
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2014年02月02日

久正人『ノブナガン(4)』

〈2014年漫画感想3冊目〉
久正人『ノブナガン(4)』


 ストーンフォレスト作戦の結末とその後の急展開が描かれる『ノブナガン』第4巻です。ストーンフォレスト作戦の大成功により進化侵略体を一度は撃破したしおたちDOGOOの面々ではありましたが,サンフランシスコを急襲した新たな進化侵略体によって遂に彼らの地上への上陸を許すことになってしまいます。何よりもその時点でサンフランシスコにいた浅尾さんが恐らくは犠牲者の中に名を連ねているというのがあまりにも辛い。その直前までしおとの嬉しい再会を果たしていただけに尚更であります。浅尾さんを失って絶望するしおは死を厭わず戦う狂戦士の如き姿となってしまっています。この絶望の淵から如何に抜け出すのかが次なる焦点と言えるでしょう。また,前巻の終わりに突如ナイチンゲールモードに移行した切り裂きジャックの真相が判明。種明かしをされれば至極当然ではあります。ふたりの偉人のE遺伝子を所有するというよりも余程に自然ですね。しかし,切り裂きジャックの正体をまさかあの人物に規定するというのは流石に意外でありましたが,それが違和感なく納まっているのが素晴らしいです。ストーンフォレスト作戦もしおとジャック,それにジェロニモを中心とした残りメンバーによる二手に分かれての最終攻撃が実に映えておりました。こういう外連味のある展開が素晴らしい。今後は如何なる方向へ物語が進んでいくのかまるで見当がつきません。サンフランシスコを占拠した進化侵略体は進化を続けて最早恐竜の如き姿を獲得しております。戦いは更なる苛烈さを増すことでありましょう。新たなE遺伝子ホルダーの登場も期待したいものであります。
タグ:久正人
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2014年01月26日

椎名高志『絶対可憐チルドレン(37)』

〈2014年漫画感想2冊目〉
椎名高志『絶対可憐チルドレン(37)』


 全篇が兵部京介の復活劇とそれに伴う黒い幽霊との戦いに費やされた『絶対可憐チルドレン』の第37巻です。収録されているのは「リターン・オブ・ファントム」の中盤あたりまでかな。薫たちの記憶から全てを消し去ったユーリの悲しい戦いと虚数空間から兵部京介を帰還させるべく作戦を開始する皆本たちの戦いが描かれます。宿敵であるB.A.B.E.LとP.A.N.D.R.Aが兵部救出という目的の為に協力する展開はやはり熱い。また,危険を承知の上で作戦行動に便宜を図る桐壷局長の男らしさも最高であります。道を分かった兄妹でありギリアムとユーリの直接対峙も燃えますね。そのユーリを援護する為にギリアムの精神支配から解放されたデュマ,アレクス,ベールは今後の活躍も期待できるのかな。そして,今巻でレアメタル京介が退場。本物の兵部に記憶を届けたかったと呟きながら消滅する姿が切ない。しかし,彼の記憶は必ず何らかの形で兵部の心を救うと信じたいところであります。また,アンディ・ヒノミヤの登場は現段階では端役ながらも嬉しい。ユウギリやソフィーらもいずれは登場することになるのかもしれません。そして今巻の最終場面で遂に満を持して兵部京介が復活しました。物語もいよいよ終盤に差し掛かっている筈。今回の黒い幽霊との戦いを持って終わるとは考えにくいのですけれども。いずれにせよ,予言された未来を変える為の戦いは終わりを迎えつつある気がします。これからの展開に期待せずにはいられません。
タグ:椎名高志
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